先日、
意識下挿管をする機会がありましたので
そのおさらいと知識定着を兼ねて記事にしておこうと思います。
「普通に鎮静して挿管するのはできるけど
意識下挿管と言われるとやり方がよくわからない」
という方もいると思うので、
ぜひ一緒に勉強していきましょう!
意識下挿管とは
普段の全身麻酔で手術する時の流れとしては、
鎮静・鎮痛・筋弛緩が得られてから
つまり、
「患者さんの麻酔が深くなってから挿管」
というのが基本です。
意識下挿管とは、
適切に鎮静薬・鎮痛薬を使用することで
患者さんの自発呼吸は残しつつ
気管挿管をする手技のことを言います。
意識下挿管の良い適応
ではどういう症例で意識下挿管を選択するのでしょうか。
主に意識下挿管が適応される症例とは、
①気道確保困難が予想される症例
②誤嚥のリスクが高い症例
③全身麻酔の導入に循環が耐えられない症例
となります。
1つずつ見ていきましょう。
気道確保困難が予想される症例
原則的に麻酔薬は呼吸抑制を起こすものと考え、
鎮静薬、麻薬、筋弛緩薬全てにおいて
呼吸停止、舌根沈下が起きる可能性があると思ってください。
高度肥満や睡眠時無呼吸症候群など
マスク換気困難や気道確保困難が予想される症例の場合、
自発呼吸がなくなってしまうと
マスク換気もできない、気管挿管もできない
Cannot Ventilate and Cannot Intubate(CVCI)の状態に陥り
低酸素による低酸素脳症や心停止の危険性が高くなります。
また、
甲状腺腫瘍や縦隔腫瘍、頸部膿瘍など気道周囲の病変で気管が圧排/狭窄している症例
食道癌による気管食道瘻があり陽圧呼吸では換気不全になる症例
なども自発呼吸を残しながら挿管することが求められます。
誤嚥のリスクが高い症例
腸閉塞やイレウスなどの消化管通過障害によるフルストマック、
外傷や急性腹症の発症後、
鼻咽頭・口腔内の出血や上部消化管出血、
などの場合、
意識がなくなると誤嚥のリスクが高くなります。
咳反射・咽頭反射を残すことで誤嚥のリスクを抑えますが、
鎮静や局所麻酔が不十分だと
反射によって体動により視野確保できず
かえって挿管の難易度が上がってしまいます。
全身麻酔の導入に循環が耐えられない症例
急性腹症や外傷などの痛みが強い時、
出血性ショックの時など
交感神経系が優位に働いており
それによって循環動態が保たれている状態の場合、
静脈麻酔薬や麻薬によって交感神経系が抑制されることで
急激な血圧低下を招くことがあります。
心抑制作用を持たないフェンタニルを使用した場合でも
高度な血圧低下を招く可能性があるため、
鎮静薬や局所麻酔薬を最小限に制限して
全身麻酔の導入を行う必要があります。
メリット/リスクについて
メリット
①自発呼吸が保たれる
意識下挿管は自発呼吸を残したまま挿管するので、
呼吸を止めてから挿管する時と比べて
気管挿管するまでに時間がかかっても
低酸素になりにくく危機的状況になりにくい
②筋緊張が保たれるため気道が確保される
麻酔薬、筋弛緩薬などを制限するので
舌根沈下する可能性が低く上気道の筋緊張が保たれ
気道が確保される
③嚥下機能が保たれるため誤嚥を防止できる
完全な意識消失や筋弛緩がないので
嘔吐物や唾液などの分泌物を嚥下することができ
気管内への誤嚥を防止できる
④いつでも後戻りできる
気管挿管するまでのどの段階でも
処置を中止して後戻りすることができるため
CVCIになる可能性が低い
リスク
①患者の苦痛が強い
鎮静下での挿管は本人に苦痛がないのに対して、
意識下挿管では精神的・身体的な患者の苦痛を伴うので
処置前には十分な説明と理解が必要
②循環の変動が大きい
血圧低下への変動を抑える代わりに
交感神経系が優位になり
脈拍増加、血圧上昇、頭蓋内圧上昇などの
循環動態の変動は大きくなりやすい
③反射が残存する
咽頭反射(嚥下)、気道反射(咳)が残るので
挿管時に体動の出現や視野確保困難の可能性が高くなる
意識下挿管の方法
意識下挿管の方法については
いくつか種類があるかと思いますが、
ここでは経鼻で気管支ファイバースコープを用いた方法を紹介します。
①ジャクソン噴霧器やスプレーで4%リドカインを鼻腔に噴霧
②同様に4%リドカインを口腔内に噴霧
・奥の方まで噴霧する
・咽頭に長時間溜めておいてもらう
③フェンタニルを25〜50μgずつ静注
・閉眼傾向にあるが呼びかけで開眼できる程度
・追加の鎮静としてミダゾラム1mgずつ投与することもあり
④4%リドカイン:エピネフリン(4:1)の混合液に浸した綿棒を鼻腔に挿入
・この時左右で抵抗のない方で挿管するようにする
⑤気管支ファイバースコープに挿管チューブを通しておく
・挿管チューブはスパイラルチューブ
・男性:6.5〜7.0mm、女性:6.0〜6.5mm
⑥鼻腔からファイバーを挿入し声門まで到達
・ここで声門上にも局所麻酔(4%リドカイン)を噴霧
⑦吸気時の正門開大に合わせてファイバーを気管内に挿入する
・気管内に挿入したら気管内に局所麻酔(2%リドカイン)を噴霧
・ファイバーの先端は気管分岐部が見える付近でOK
⑧挿管チューブを鼻腔から気管内に挿入する
⑨ファイバーを挿管チューブから抜去する
・挿管チューブが気管内に留置されていることを確認
・挿管チューブ越しに気管分岐部を見て片肺挿管でないことを確認
⑩換気の確認と麻酔導入
・カフを膨らましてEtCO2の波形を確認
・麻酔導入は急がず換気を確認してからでOK
・吸入麻酔薬もしくは静脈麻酔薬で就眠させる
他にも
経口での意識下挿管
エアウェイスコープを使用しての意識下挿管
などもありますが、
基本的な流れとしては似ています。
エアウェイスコープの場合、
挿管時に噛まれてもチューブが潰れなかったり、
挿管後もイントロックを口腔内に残しておくことで
バイトブロックのような役割を担ってくれるという利点もあります。
まとめ
以上。
意識下挿管とそのやり方について勉強していきました。
普通の気管挿管ではリスクの高い症例で行うため、
頻繁に行う手技ではないと思いますが、
麻酔科医としては絶対に知っておきたい手技です。
大事なことは、
・リドカインなどで適切な局所麻酔
・フェンタニルなどで適切な鎮痛
・確実に換気を確認してから鎮静薬を使用
慌てず、落ち着いて、安全に、
意識下挿管ができることを願っています!
ではでは〜


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