硬膜穿刺後頭痛について

先日、硬膜外麻酔をおこなった翌日から
頭痛を訴えている患者さんがいました。

診断としては『硬膜穿刺後頭痛』でした。

麻酔科として目を背けるわけにはいきませんし、
今回の症例は最終的に麻酔科が治療に介入したので、
硬膜穿刺後頭痛について勉強しておこうと思いました。

起きないことが一番ですが、
可能性を0にすることはできないので
起きた時に慌てないように
対処方法を知っておくことも大事です。

では早速いきましょう!

硬膜穿刺後頭痛とは

まずは硬膜穿刺後頭痛とは何かおさらいしましょう。

硬膜穿刺後頭痛(postdural puncture headache : PDPH)は
脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔を施行する際に
硬膜に穴が空いてしまうことで脳脊髄液が漏出してしまい
頭痛が生じる状態のことを言います。

機序としては
脳脊髄液が漏出することで頭蓋内圧が低下し
頭蓋内の神経組織が牽引されて頭痛を生じると言われています。

・硬膜穿破後にPDPHを発症する頻度は17GのTuohy針など太い針で50〜80%程度

・症状発症までに1〜7日程度(多くは48時間以内)

・2日から2週間で症状軽快することが多い

症状

頭痛
頚部痛
悪心・嘔吐
視覚症状(めまい)
聴覚症状(耳鳴り)

特徴として
立位や座位で症状の増強
臥位で症状の減弱
を認める

治療

①安静臥床
②補液(経口or点滴)
③カフェイン(経口or静注)
④鎮痛薬(NSAIDs、オピオイド)
⑤硬膜外自己血パッチ

まずは保存的治療で経過観察することが多いです。

症状が増悪しないように安静臥床となり、
漏出した脳脊髄液を補充するために水分摂取を促したり
経口摂取が難しい場合は点滴で補液を行います。

低頭蓋内圧による脳血管拡張も頭痛の原因と考えられているため
血管収縮を期待してカフェインの摂取を推奨することもあります。

カフェインは
薬剤として300〜500mg/日を経口摂取または静注で投与したり、
コーヒーや紅茶などを摂取してもらったりします。

ちなみに、
一般的なコーヒー1杯150mLには
約90mgのカフェインが含まれているので、
3〜4杯くらいを目安にするといいです。

補助的な鎮痛薬として
NSAIDsやオピオイドも使用します。

一方、
これらの保存的治療でも48時間以上軽快しないような場合には
『硬膜外自己血パッチ』を考慮します。

硬膜外自己血パッチ

硬膜外自己血パッチ(epidural blood patch : EBP)は
患者の血液を採血し(自己血)、
再度硬膜外穿刺を行い
硬膜外腔に自己血を注入するという処置です。

EBPにより硬膜に開いている穴を塞ぎ、
脳脊髄液の漏出を抑えることで
頭蓋内圧の上昇を促して頭痛を軽減させるという治療です。

硬膜外に注入する血液量としては
10〜20mLが一般的です。

治療有効率は
60〜75%とされています。

硬膜外に自己血を注入すると
硬膜外腔の圧が上がることで
「腰を押されたような鈍痛」、
「首の方まで広がる張り感」、
「下肢への放散痛」などを訴えることがあります。

むしろそれらの反応があった方が
「いいところに入ってるな」という指標にもなるので
常に患者さんとコミュニケーションをとりながら
処置を進めていくことが重要です。

合併症
腰背部痛
永続的神経症状
脊髄神経根症状
脊髄硬膜下血腫・脊髄硬膜外血腫・くも膜下血腫
くも膜炎などの感染症

予防

脊髄くも膜下穿刺の場合は
なるべく細経(25〜26G)の
ペンシルポイント型の針を用いる。

Tuohy針や斜端針などを用いる場合には
切り口を硬膜外線維と並行にして損傷を抑えることも
予防の一つとされていますが、
頭痛の頻度に差はないとの報告もあります。

まとめ

以上、
硬膜穿刺後頭痛(PDPH)ついて簡単にまとめました。

①PDPHを見逃さない
術後の頭痛があったら、「横になると楽になりますか?」の一言を確認

②保存的治療は48時間を目安に
保存的治療で改善しない場合は長期間粘らず
患者さんのQOLも考えてEBP介入の検討を

③EBPは患者さんの反応を確認しながら
患者さんの反応を聴きながら進めることがEBP成功の鍵です

合併症なんて起きないのが一番ですが、
一定の確率で起きてしまうのが合併症です。

起きた合併症に対して
対処方法の引き出しをいくつも持っておくことが
患者さんにとっても自分にとっても
安心材料になることは間違いありません。

硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔をする際は
『なるべく細い針で』
『慌てず、ゆっくり、慎重に』
を意識してみてください!

ではでは〜

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