「手術中に血圧が下がってきたけど、
どの昇圧薬を使って血圧を上げたらいいのかわからない。」
そんな時のために
今回は昇圧薬について勉強していこうと思います。
どの昇圧薬がどういう作用で血圧を上げているのか。
簡単にまとめて
今後も見直せるようにしようと思うので、
臨床で困った時にはたまに使ってみてください!
では早速みていきましょう!
血圧低下の原因
血圧がなんの要因で構成されているかをまずはみていきましょう
血圧 = 心拍出量(CO) × 末梢血管抵抗(SVR)
となります。
また、
心拍出量 = 1回拍出量(SV) × 心拍数(HR)
となります。
そして1回拍出量は
・心収縮力
・前負荷
・後負荷
によって規定されます。
血圧が低下するということは、
上記のいずれかもしくは複数が低下している状態
となります。
前負荷が低下している状態というのは
心臓に返ってくる血液が少ない状態ということなので、
輸液や輸血が対処方法となります。
今回はその他の
心拍出量、末梢血管抵抗が低下した時に使用する
昇圧薬についてまとめていきます。
カテコラミンについて
カテコラミンは
α受容体とβ受容体のどちらに作用するかのバランスが
薬剤によって異なります。
α作用 … 末梢血管収縮
β1作用 … 心拍数上昇、心収縮力増加
β2作用 … 末梢血管拡張、気管支拡張
各薬剤によってこれらのバランスが異なるため、
後負荷(末梢血管抵抗)を上げたい → α作用
心収縮力を上げたい → β1作用
という具合に、
使用する昇圧薬を決定していきます。
各薬剤について
私の独断と偏見で
よく使うと思った薬剤のみ書いていこうと思います。
フェニレフリン(ネオシネジン)
選択的α1刺激薬で、
β作用はほとんどない
血圧は上がるが
反射により徐脈になることがある
徐脈により心拍出量を下げるので
心予備力が低いと使いにくい
心拍数を低下させるため
心拍出量を心拍数に依存する小児では使いにくい
用法・用量
1A(1mg)を生食で10mLに希釈(0.1mg/mL)
静注:0.05〜0.2mg(0.5〜2mL)/回
持続投与:0.3〜1mg(3〜10mL)/hr
エフェドリン
α作用、β作用いずれもあり
投与量が少ないとβ作用が優位に出るので
血圧低下が先行する場合がある
→ 緊急時には8mg投与を検討
用法・用量
1A(40mg)を生食で10mLに希釈(4mg/mL)
静注:4〜8mg(1〜2mL)/回
ドパミン(イノバン)
α作用、β作用いずれもあり
※投与量によってαとβのバランスが異なる
褐色細胞腫には禁忌
アルカリ性薬剤(メイロン)と配合禁忌
中心静脈ルートからの投与が原則
投与量による作用の変化
①低用量(1〜3γ)
ドパミン受容体に作用して冠血流・腎血流・腸管血流が増加
腎血流増加により尿量が増加する
血圧は上がらない
②中等量(3〜10γ)
β1作用が優位に出現し心収縮力と心拍数が増加する
投与量が増加するとα作用も出てくる
③高用量(10〜20γ)
α作用が優位になり末梢血管抵抗上昇により血圧が上昇する
さらに投与量が増えると臓器循環が悪くなる
用法・用量
アンプル製剤は生食で希釈してシリンジポンプで使用
キット製剤は希釈なしで使用可能
持続投与:初期投与速度は3〜5γとして調整する
例)
体重50kg、0.3%キット製剤の場合、
3〜5γ = 3.0〜5.0mL/hr
0.3%製剤の場合、
時間流量(mL/hr)= 投与速度(γ)×[体重(kg)/50]
で時間流量を計算できる
ドブタミン(ドブトレックス)
β作用のみ
α作用はほとんどない
閉塞性肥大型心筋症には禁忌
アルカリ性製剤、ナトリウムを含む一部の製剤(ヘパリンなど)と配合禁忌
末梢静脈からの持続投与も可能
用法・用量
アンプル製剤は生食で希釈してシリンジポンプで使用
キット製剤(0.3%)は希釈なしで使用可能
持続投与:初期投与速度は2〜5γ(最大20γ)
例)
体重50kg、0.3%キット製剤の場合、
2〜5γ = 2.0〜5.0mL/hr
ノルアドレナリン
強いα作用と弱いβ作用をもつ
弱いβ作用があるため、
α作用のSVR上昇によるCO低下が是正される
コカイン中毒には禁忌
アルカリ性製剤と配合禁忌
用法・用量
1A(1mg)を生食で50mLに希釈(20μg/mL)したり
3A(3mg)を生食で50mLに希釈(60μg/mL)したり
5A(5mg)を生食で50mLに希釈(100μg/mL)したり
1A(1mg)を生食で20mLに希釈(50μg/mL)したり
施設によっていろいろな希釈方法があります。
持続投与:0.03〜0.2γで循環動態をモニタリングしながら調整
例)
体重50kg、3mg/50mLの場合、
0.02〜0.3γ = 1.0〜15mL/hr
アドレナリン(ボスミン)
強力なα作用と強力なβ作用を併せもつ
低用量 → β作用優位
高用量 → α作用優位
血糖値上昇、乳酸値上昇、K低下に注意
アルカリ性製剤と配合禁忌
用法・用量
1A(1mg)を生食で10mLに希釈(0.1mg/mL)
静注:0.1〜0.2mg(1〜2mL)/回
持続投与:0.02〜0.3γで循環動態をモニタリングしながら調整
アナフィラキシーショック時:0.1mg(1mL)ずつ静注
心肺蘇生時:1mgずつ静注
バソプレシン(ピトレシン)
バソプレシンはカテコラミン受容体ではなく
腎臓のV2受容体、血管のV1受容体に作用し
抗利尿作用と血管収縮作用をもつ
カテコラミン抵抗性のショックで有効
用法・用量
1A(20単位)を生食で20mLに希釈
持続投与:0.02〜0.04単位/分(1.2〜2.4mL/hr)で投与
早見表
| 薬剤 | 心拍数 | 平均血圧 | 心拍出量 | 末梢血管抵抗 |
| フェニレフリン | ↓ | ↑↑↑ | ↓ | ↑↑↑ |
| エフェドリン | ↑↑ | ↑↑ | ↑↑ | ↑ |
| ドパミン | ↑〜↑↑ | ↑ | ↑↑↑ | ↑ |
| ドブタミン | ↑ | ↑ | ↑↑↑ | ↓ |
| ノルアドレナリン | ↓ | ↑↑↑ | ↓/↑ | ↑↑↑ |
| アドレナリン | ↑↑ | ↑ | ↑↑ | ↓/↑ |
| バソプレシン | ↓ | ↑↑ | ↓ | ↑↑ |
| 薬剤 | 調製例 | 静注量 | 持続投与 (体重50kgの場合) |
| フェニレフリン | 1mg/10mL | 0.5〜2mL | 3〜10mL/hr |
| エフェドリン | 40mg/10mL | 1〜2mL | ー |
| ドパミン | 0.3% | ー | 3〜5mL/hr (3〜5γ) |
| ドブタミン | 0.3% | ー | 2〜5mL/hr (2〜5γ) |
| ノルアドレナリン | 3mg/50mL | ー | 1〜15mL/hr (0.02〜0.3γ) |
| アドレナリン | 1mg/10mL | 1〜2mL | 0.02〜0.3γ |
| バソプレシン | 20単位/20mL | ー | 1.2〜2.4mL/hr (0.02〜0.04単位/分) |
まとめ
以上、私の独断と偏見で
手術の時に使う昇圧薬をまとめていきました。
同じ低血圧でも、
「水(前負荷)が足りない」
「締まり(末梢血管抵抗)が緩い」
「ポンプ機能(心収縮力)が弱い」
など機序によって使うべき薬剤が違うことが学べたと思います。
全身麻酔の時は、
・心拍数も低い、またはどちらも上げたい → エフェドリン
・心拍数は十分(または頻脈)、血管だけ締めたい → フェニレフリン
・それでも血圧が低い時 → ノルアドレナリン
・心収縮力が欲しい → ドブタミン
という感じで考えています。
アドレナリン、バソプレシンを使う時は
だいぶヤバい時という印象です。
ドパミンは私はあまり使わないですが、
麻酔科医によっては好んで使う人もいるという感じでしょうか。
大事なのは、
「今、患者さんの体の中で何が起きているか」を推測して、
それに合わせた一手を選択することです。
もし迷ったら、この記事の早見表をこっそり見返してみてください。
皆さんの麻酔が、より安全でスマートなものになることを願っています!
ではでは〜


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