ここでは周術期における感染について書きたいと思います。
感染と一口に言っても皮膚の感染から腹腔内の感染まで様々です。
消化器外科領域の手術において、手術を最初から最後まで無菌で行うことはとっても難しいんです。というかほぼ不可能ではないかと思っています。
胃や腸を切除・切離した時点で、便や食物残渣の漏出を肉眼的にほとんどない状態に抑えられても、ミクロのレベルでは腸内細菌や便汁の漏出は防ぎきれず、その時点で汚染された手術になってしまうからです。
ましてや胃・十二指腸穿孔や大腸穿孔などの疾患においては、消化液や便が腹腔内に漏れている状態なので、手術時点ではすでに腹腔内が高度に汚染されており、術後の感染が起こる可能性がとても高い手術といえます。
創感染
創感染とは手術の際に皮膚切開し、閉じた皮膚に感染を起こしてくることです。
創感染が起きた場合、皮膚直下や筋膜の層に膿瘍形成してくるため、創部を一部開放して排膿したり、洗浄したりする必要があります。
創感染が重度になり、感染が収まったのに皮膚の開きが大きく閉創できない状態になるとVAC療法という創傷治癒を促進する機械を使ったり、筋膜の層で感染を起こした場合、筋膜が離開して腹壁瘢痕ヘルニアを起こしたりすることもあります。
腹腔内感染
腹腔内が汚染した手術になった場合、閉腹の時には腹腔内を洗浄してから閉腹しますが、洗浄も完全ではないため、術後に腹腔内に感染を起こしてきて、腹腔内に膿瘍を形成してくることもあります。
腹腔内膿瘍ができてしまった時には、腹腔内の臓器が邪魔にならないところであれば、おなかの外から針を刺して膿瘍まで到達させ、針をガイドに膿瘍内にドレナージチューブというチューブを留置することで膿瘍を外に排出することができ、治りが早くなることが期待できます。
また、縫合不全が起きた時には、膿瘍形成ではおさまらずに汎発性腹膜炎の状態になる可能性があるため、そうなってしまった時には緊急手術が必要になることもあります。
縫合不全については別の記事で詳しく記載しています。
肺炎
これは消化器手術で特筆するものではないですが、
消化器手術をする場合、ほとんどの方が全身麻酔での手術になると思います。
全身麻酔の手術では、小指ほどの太さのチューブを口から入れて気管に留置する気管挿管をすることで人工呼吸器で呼吸の補助をすることになります。
それにより口腔内の常在菌が気管内に落ち込んだり、喫煙者では痰が増えるため、それにより肺炎を起こすこともあります。
そういう意味ではやはり喫煙者は血管関連、発癌関連などいろいろなリスクがありますね。
コメント