末梢神経ブロック ~体幹~

今回は体幹に使うブロックを学んでいこうと思います。

その中でも、
・腹直筋鞘ブロック
・腹横筋膜面ブロック
・脊柱起立筋面ブロック
を解説していきます。

では早速いきましょう!

腹直筋鞘ブロック

適応

皮膚切開が腹部正中となる手術の麻酔と鎮痛

特徴

・腹部正中の体性痛の鎮痛はできるが、内臓痛や腹膜牽引時の疼痛については鎮痛できない

・腹直筋の背側には横筋筋膜と腹膜しかないので、腹腔内への誤穿刺に注意

小児の臍ヘルニア修復術にも使用される

鎮痛範囲

皮膚  … 臍周囲(Th9~11)、前内側腹壁

筋 … 腹直筋

局所麻酔薬の使用量

片側につき10mL程度

小児では、片側につき0.1mL/kg(0.375~0.5%ロピバカイン)

超音波の解剖

腹部正中で横断面方向にプローブを置くと、白線に隔てられた紡錘型の左右腹直筋を確認できる

腹直筋の深部に高エコー性の腹直筋鞘後葉がある
腹直筋の下部1/4には腹直筋鞘後葉が存在しない(弓状線)

腹直筋の外側には、深層から順に腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋の3層の筋肉が確認できる

手技

プローブを臍上方、傍正中に横断面方向に置き、白線および腹直筋を同定する

外側方向にプローブを移動していき、腹横筋、内・外腹斜筋の3層構造を確認する

針を刺入させ、腹直筋鞘前葉と腹直筋を貫いて後葉まで到達させる

後葉を貫かず、腹直筋と腹直筋鞘後葉の間に局所麻酔薬を注入していく
※適切な部位に注入できていれば、腹直筋は持ち上がり、腹直筋鞘後葉は押し下げられる

両側ブロックすることで鎮痛を得られる

腹横筋膜面(TAP)ブロック

適応

腹壁および壁側腹膜の鎮痛

特徴

体性痛の鎮痛に限られる

・腹横筋膜面に沿っていくつかの部位からのアプローチがある

・腹壁は肋間/肋下神経(Th6~12)、腸骨鼠径/腸骨下腹神経(L1)の支配を受けている

鎮痛範囲

皮膚・筋  … 局所麻酔薬の投与部位に応じて、前腹壁、外側腹壁、鼠径部を除痛する

肋骨弓下TAPブロック … Th6~9

側方/後方TAPブロック … Th9~12

腸骨鼠径/腸骨下腹神経ブロック … Th11~L1

局所麻酔薬の使用量

一か所につき15~20mL程度(0.2~0.3mL/kg)
 ※局所麻酔薬の最大許容使用量を超えないように注意!

超音波の解剖

プローブを腹壁に横断面方向に置くと、浅部から外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の順に低エコー性の3層構造が描出される。

手技

①肋骨弓下TAPブロック

肋骨弓下に沿って、剣状突起の外側(なるべく内側かつ頭側)に斜位方向にプローブを置く

腹直筋の外側に3層構造が確認できる

外腹斜筋と腹横筋の間に、内腹斜筋の腱膜が入りこむように見える

針を刺入させ、「腹直筋と腹横筋の間の筋膜面」もしくは「内腹斜筋と腹横筋の間の筋膜面」に局所麻酔薬を注入する

②側方TAPブロック

肋骨弓下縁と腸骨稜の間の中腋窩線上に横断面方向にプローブを置く

3層構造が確認できる

針を前方から後方に向かって刺入させ、中腋窩線付近の内腹斜筋と腹横筋の間の筋膜面に局所麻酔薬を注入する

③後方TAPブロック

患者は側臥位

肋骨弓下縁と腸骨稜の間の後腋窩線上に横断面方向にプローブを置く

3層構造が確認できる

内腹斜筋と腹横筋の後方停止部までプローブを後方に動かし、腹横筋筋膜の最後端までいくと、腰方形筋が確認できる

中腋窩線上で針を前方から後方に向かって刺入させ、横筋筋膜の浅部に位置する腹横筋膜面端に局所麻酔薬を注入する

④腸骨鼠径・腸骨下腹神経ブロック(前方TAPブロック)

プローブの外側端が上前腸骨棘、内側端が臍に向くように、プローブを斜位方向に置く

プローブを尾側に傾けると、3層構造が確認できる
※うまく描出できないときは、プローブを頭側や外側に動かす

針を内側外側いずれかから刺入させ、内腹斜筋と腹横筋の間の層に局所麻酔薬を注入する

脊柱起立筋面ブロック

適応

肋骨、背部、胸壁の鎮痛

特徴

・頸椎、胸椎、腰椎のレベルで皮膚分節に鎮痛が得られる

気胸、神経損傷、血腫に注意

局所麻酔薬の血中濃度が他のブロックより高くなる
 →アドレナリンの使用や、高齢者では用量を減らすことなども必要

鎮痛範囲

皮膚、筋、骨 … 局所麻酔薬が広がった脊椎レベルに合わせた、背部の皮膚、脊柱起立筋、肋骨

局所麻酔薬の使用量

20~30mL程度

超音波の解剖

左右対称の脊柱起立筋が横突起と椎弓板を覆っている

Th5より上位では、横突起の浅層に3層構造(浅層から僧帽筋、大菱形筋、脊柱起立筋)を認める

中位・下位胸椎レベルでは、僧帽筋、脊柱起立筋を認める

手技

患者は坐位、側臥位、腹臥位のいずれか

背部の骨ランドマークを頼りに標的とする脊椎レベルを確認する
 ・隆椎(首の後ろの一番膨隆している部位) … C7
 ・肩甲棘 … Th3
 ・肩甲骨下角 … Th7

プローブを正中約2cm外側で矢状面方向に置き、音響陰影を後方に伴う横突起を同定する
 ※プローブの位置が内側すぎると椎弓板が、外側すぎると肋骨とその間に胸膜が描出される

針を刺入させ、針先を横突起に当てる

局所麻酔薬を1~3mL注入し、脊柱起立筋と横突起の間の層に広がることを確認する

鎮痛を得たい脊椎レベルで局所麻酔薬を拡散させる

まとめ

今回は、体幹に用いられる代表的な末梢神経ブロックとして、
腹直筋鞘ブロック、腹横筋膜面(TAP)ブロック、脊柱起立筋面ブロック を解説しました。

いずれのブロックも、体性痛の鎮痛が主目的であり、
内臓痛に対しては効果が限定的である点を理解して使い分けることが重要です。

また、体幹ブロックは比較的局所麻酔薬の使用量が多く
局所麻酔薬中毒や誤穿刺への注意が不可欠です。

体幹の末梢神経ブロックもまだ多くのバリエーションがあるので、
今後も少しずつ取り上げて整理していけたらと思います!

ではでは~

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