ここでは、胆嚢摘出術について紹介しようと思います。
胆嚢摘出術は、
私が外科医として勤務していた期間のうち、
消化器外科の中では1位、2位を争う程に件数が多い手術でした。
胆嚢摘出術とは
そもそも「胆嚢(たんのう)」とは?
簡単に言うと、
胆嚢とは、肝臓で生成された「胆汁」を貯留しておくための袋状の臓器です。
人間が食べたものは胃や十二指腸、小腸などで消化液と混ざることで消化されます。
そのうち十二指腸に流れる消化液が、
肝臓で生成される「胆汁」と膵臓で生成される「膵液」です。
そのうち、胆汁は胆嚢に貯留されており、
十二指腸に食べ物が通ると、胆嚢が収縮して十二指腸に胆汁を流す
というような働きをしています。

胆嚢摘出術ってどんなことをするの?
肝臓の下にくっついてぶらさがっているような状態なので、
手術の内容をざっくりと簡単に説明すると
① 袋状の胆嚢の根元で切る
② 胆嚢を栄養する血管を切る
③ 肝臓とくっついている部分をはがす
この3ステップで胆嚢をとることができます。
近くの臓器と癒着していたり、解剖の異常などがあれば、
別の行程が追加されたり、
ガラッと手術が変更になることもありますが、
ここでは一般的なものにフォーカスさせてください。
上記の3ステップを遂行できれば、手術の方法は正直なんでもいいのですが、
最近では、胆嚢の手術のほとんどが腹腔鏡で行われます。
開腹手術より、腹腔鏡手術の方が、
・拡大視でき、細かい解剖も確認しながらできる
・術者以外のスタッフも術野を同じように見ながらできる
(開腹手術だと、術者の頭で他の人が術野を見えないということがよくあります)
・傷が小さく済む
などのメリットがあります。
実際、私が経験した胆嚢摘出術も、
9割くらいが腹腔鏡手術で、
開腹手術になるパターンは、
・炎症が強すぎて腹腔鏡では難しい時(腹腔鏡→開腹への移行も)
・術中に他の臓器を損傷してしまい、修復が必要になる時
・胆嚢癌が疑われる時
などでしょうか。
腹腔鏡では、臍部を含め、3~4か所に1cmくらいの傷を作って手術をします。
きれいに縫合すれば、ほとんど傷はわからないくらいになります。
所要手術時間は、
胆嚢の状態によって本当にまちまちになってしまいます。
手術の原因が胆石や胆嚢ポリープで、ほとんど炎症がないものだと、
30分~1時間くらいで手術自体は終わってしまいます。
ただ、胆嚢炎の手術となると、
周りの組織との癒着や、組織自体の硬さなども相まって、
炎症の程度によっては3~4時間くらいかかることもあります。
(私が最高に大変だった胆嚢炎は6時間かかりました。泣)
考えられる合併症については、別の記事で書こうと思います。
胆嚢がなくても大丈夫?
では、胆嚢をとってしまったらどうなるでしょうか?
答えは、「体に影響が出ることはほとんどない」です。
先ほど説明したように、
胆嚢自体の働きは、「胆汁を貯留しておく」でした。
胆嚢がなくなったら、
肝臓で生成された胆汁は、十二指腸に垂れ流し状態になります。
ただ、消化には大きく影響はないので、
胆嚢摘出術を受けた患者さんで、不具合を訴える方はほとんどいなかったです。
天丼、かつ丼、ラーメンなど、脂っこいものを一気に食べると、
さすがに消化が追い付かなくて、
下痢になることはあるかもしれませんが、
私の周りで胆嚢をとった方も、普通に食生活には不自由なく生活しています。
自分で食べる量の調節や、脂っこいものを食べてみて、
「これくらいならこんな症状が出るのか」
など、調節してみたらいいと思います。
まとめ
以上、胆嚢摘出術について、簡単にご紹介しました。
手術はどうしても不安を伴いますが、
事前に内容を知っておくだけで、
気持ちが少しでも楽になることがあると思っています。
胆嚢摘出術を控えている方やそのご家族は、
主治医としっかり話し合い、納得できる形で手術に臨んでください。
この情報が、手術をより安心して受けるための一助になれば幸いです。
ではでは~
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