末梢神経ブロック ~上肢~

今回は上肢の末梢神経ブロックを勉強していこうと思います。

ここで勉強する上肢の末梢神経ブロックは、
・腕神経叢ブロック 斜角筋間アプローチ
・腕神経叢ブロック 腋窩アプローチ
この2つです。

ひとつずつ詳しく見ていきましょう!

腕神経叢ブロック 斜角筋間アプローチ

適応

肩、鎖骨、上腕橈側、前腕橈側の手術の麻酔と鎮痛

特徴

・C8、Th1はブロックされない

尺骨神経領域の鎮痛は得られないことが多い

・ターニケットペインには末梢のアプローチで対応

同側の横隔神経ブロックにより横隔膜麻痺に注意
 (横隔神経は前斜角筋の前方を走行する)

鎮痛範囲

皮膚  … 肩、上腕橈側、前腕橈側

筋肉 … 肩、上腕、前腕橈側

骨 … 鎖骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、手橈側

局所麻酔薬の使用量

5~15mL

超音波の解剖

腕神経叢は前斜角筋と中斜角筋の間に位置する

エコーでは通常、低エコーの円形構造物として描出

C5、C6、C7が横突起から出てくる様子が見え、C6は2つに分かれる

前結節のあるC5、C6横突起は『カニ爪』
前結節のないC7横突起は『すべり台』

手技

仰臥位で頭部をブロックと反対側に向ける

ブロックの同側に肩枕を入れておく
穿刺するときのスペースが確保しやすい

エコープローブを輪状軟骨の尾側外側に横断面方向にあてて
そのまま外側背側に進めていき、C5、C6、C7横突起を確認する
※C7の前結節のない横突起を指標にしてC5、C6を探すと探しやすい

中斜角筋側(背側)から平行法で穿刺を行う
穿刺経路に外頸静脈がないか目視で確認する!

中斜角筋を抜けたところでC5、C6周囲に局所麻酔薬を注入する

腕神経叢ブロック 腋窩アプローチ

適応

肘、前腕、手の手術の麻酔と鎮痛

特徴

筋皮神経に対しては、個別に局所麻酔薬の投与が必要

・腋窩動脈の前方および後方に投与する血管周囲法と
 個々の神経の近傍に投与する神経周囲法がある

・各神経ブロックによって運動麻痺をきたす
正中神経 手関節の屈曲、手指の屈曲など
橈骨神経 手関節の伸展、手指の伸展など
尺骨神経 手指の外転内転など
筋皮神経 肘関節の屈曲など

鎮痛範囲

皮膚  … 上腕約半分からそれより末梢

筋肉 … 上腕約半分からよれより末梢

骨 … 上腕骨骨幹部より末梢

局所麻酔薬の使用量

15~20mL(各神経に3~5mL)

超音波の解剖

腋窩動脈および腋窩静脈は、
・後方 → 大円筋と広背筋の結合腱
・外側 → 上腕二頭筋、その背側に烏口腕筋
・前方、内側 → 上腕筋膜および皮下組織
に囲まれた三角形の間隙内に位置する

腋窩動脈の周囲に
尺骨神経正中神経橈骨神経
が位置している

上腕二頭筋と烏口腕筋の間に
筋皮神経
が位置している

手技

仰臥位で肩を90°外転、肘を90°屈曲の体勢

前腋窩ヒダと上腕二頭筋の交点に、エコープローブを上腕に垂直に起き、腋窩動脈と腋窩静脈を同定する

平行法で針を刺入させ、腋窩動脈の近傍に位置する正中神経、尺骨神経、橈骨神経周囲に局所麻酔薬を注入する

上記3つの神経が並んでおらず、一度の穿刺で投与完了できない場合は、
腋窩動脈の深部から橈骨神経
腋窩動脈の浅部から尺骨神経
最後に正中神経
など、それぞれ個別でブロックすることもある

烏口腕筋内の筋皮神経を覆う筋膜面に局所麻酔薬を注入する

まとめ

腕神経叢ブロックにはまだ他のアプローチ方法もありますし、
上肢のブロックで言うとまだまだ種類があるので、
これでもまだまだ序の口というところが大変なんですが、
まず覚えるべきブロックとして今回2つのアプローチを勉強しました。

今後はもう少し別のブロックも勉強していこうと思います!

ではでは~

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