吸入麻酔薬について part2

以前にも『吸入麻酔薬について part1』
という記事を書いていましたが、
今回は吸入麻酔薬についてさらに理解を深めようと思います。

血液/ガス分配係数とは、
MACとは、
というなんだか難しそうな内容ですが、
自分自身のためにも少しでもわかりやすく書くので
知識の浅い人も読んでみてもらえるとうれしいです。

ではさっそくやっていきましょう!

血液/ガス分配係数とは?

吸入麻酔薬を勉強すると、
血液/ガス分配係数という言葉を目にすることがあると思います。

これがどういう数字かというと、
吸入麻酔薬の血液への溶けやすさ」を表しています。

血液/ガス分配係数は薬剤によって決まっており、
セボフルラン … 0.66
デスフルラン … 0.42
イソフルラン … 1.4
ハロタン … 2.3
亜酸化窒素(N2O) … 0.47
となっています。

数字が高いほど『血液に溶けやすい』ことを示しており、
臨床現場でよく使用されるセボフルランやデスフルランは
イソフルランやハロタンと比べて
血液に溶けにくいことがわかります。

血液/ガス分配係数と導入・覚醒速度

なんとなく血液/ガス分配係数はわかりましたが、
この数字が臨床現場にどう使えるのかが重要です。

ここからは私のイメージで、
正確な表現かどうかはわかりませんので、
理解の参考までにしておいてください。

前提として吸入麻酔薬は
肺→血液→脳の経路で運ばれていくことで
鎮静効果を得ることができ、
最終的には3つの部位の濃度は同じになります。

血液/ガス分配係数が低い(血液に『溶けにくい』)と、
肺に吸入麻酔薬が取り込まれる
→血液内に溶けることができる吸入麻酔薬が限界に達する
 (血液から吸入麻酔薬が出ていきやすい
→血液が脳に達すると吸入麻酔薬が脳にシフトしやすい
→吸入麻酔薬を開始してから鎮静が得られるのに時間がかからない
導入が早い
血液/ガス分配係数が高い(血液に『溶けやすい』)と、
肺に吸入麻酔薬が取り込まれる
→吸入麻酔薬を入れても血液内にどんどんたまっていく
 (血液から吸入麻酔薬が出ていきにくい
→血液が脳に達しても吸入麻酔薬が脳にシフトしにくい
→吸入麻酔薬を開始してから鎮静が得られるのに時間がかかる
導入が遅い

さらに、
吸入麻酔薬の投与を中止するとこれと逆のことが起きるので、
脳→血液→肺の順に
吸入麻酔薬が呼気として出ていくことで
濃度が下がった結果覚醒するので、
血液/ガス分配係数が低い → 覚醒も早い
ということになります。

MACとは?

セボフルランとデスフルランの
導入・覚醒の速さを理解したところで
「ではどれくらいの量を投与したらいいのか」
について見ていきましょう。

ここで出てくるのがMACです。

最小肺胞濃度(Minimum Alveolar Concentration:MAC)とは、
執刀時に50%の患者が体動しない吸入麻酔薬濃度
のことをいいます。

つまり、
『MACが高い → 高い濃度を保たないと鎮静できない』
『MACが低い → 低い濃度でも鎮静が保てる』
というような、麻酔作用の強さを示すイメージです。

セボフルランとデスフルランの年齢別のMACを
表にして載せておきます。

 新生児  1~6か月  6か月~10歳  成人 
セボフルラン 3.3% 3.2% 2.5% 1.7%
デスフルラン 9% 10% 8~10% 6~7% 

さらにここから、
セボフルランは10歳年齢が上がるごとに7.2%ずつ減少し、
デスフルランは70歳までで5.2%まで減少する
と言われています。

いろいろな教科書などの情報をまとめた感じで
年齢や数値などは多少ずれている部分があるかもしれませんので、
大まかな目安にしてください。

「執刀時に50%の患者が体動しない吸入麻酔薬濃度」
というものの、
全身麻酔中は吸入麻酔薬だけではなく
オピオイドなどの鎮痛薬、
ロクロニウムなどの筋弛緩薬を併用することがほとんどなので、
吸入麻酔薬は鎮静を目的として使用されます。

したがって実臨床では、
MACよりもMAC-awake
つまり、
50%の患者が呼名で反応する(覚醒する)吸入麻酔薬濃度
の方が実用的に使用されています。

MAC-awakeは
およそMACの1/3(0.33MAC)とされており、
実際の全身麻酔では
MAC-awakeの2倍の濃度の0.7MACくらいで、
成人では
セボフルラン → 1.5~2%
デスフルラン → 4~5%
で維持することが多いです。

また、MACは年齢や体温、患者の全身状態によって
上昇したり(麻酔作用が低くなる)低下したり(麻酔作用が高くなる)するので、
症例によって、濃度の調節は必要になってきます。

 MACが低下する要因 
 (麻酔が効きやすい)
 高齢者
 低体温
 妊婦
 高度の出血・低血圧
 鎮静薬・オピオイドの併用 
 PaCO2低下
 MACが上昇する要因 
 (麻酔が効きにくい)
 若年
 高体温
 慢性アルコール中毒

これらの要因を考慮して
症例によって少しずつ濃度を調整していきます。

最後に

今回は吸入麻酔薬のさらに深くまで学んでみました。

血液/ガス分配係数もMACも
なかなか聞き馴染みのない言葉ですが、
思ったよりも難しい内容ではなかったかと思います。

普段よく使う吸入麻酔薬だからこそ
きちんと理解して使っていきたいですね。

この記事が読んでくれた皆さんの役に立てれば嬉しいです!

ではでは~

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