全静脈麻酔(TIVA)について

今回は全静脈麻酔(TIVA)について学んでいこうと思います。

この前、「プロポフォールでTIVAでやるよ!」と言われたときに、
投与量などがパっと思いつけなかったので、
改めて勉強して記憶を定着させるとともに
忘れた時にさっと見返せるように記事として残しておこうと思いました。

では早速やってきましょう!

全静脈麻酔(TIVA)とは?

まず初めに、全静脈麻酔(ここからはTIVAとします)とは何かについて確認していきます。

全身麻酔の三要素とは、鎮静、鎮痛、筋弛緩でしたよね?

このうち鎮痛は主にレミフェンタニルやフェンタニルなどのオピオイド、
筋弛緩はロクロニウムなどの筋弛緩薬が担当することになります。

鎮静はというと
セボフルランやデスフルランなどの吸入麻酔薬と、
プロポフォールやラボナール、アネレムなどの静脈麻酔薬が担当することになります。

全身麻酔の導入は静脈麻酔薬で、維持は吸入麻酔薬で行う手術が多いと思いますが、
手術の術式や症例によっては、全身麻酔の維持も静脈麻酔薬で行うことがあります。

そういった鎮静、鎮痛、筋弛緩のすべてを経静脈的に管理する麻酔を、『全静脈麻酔』といいます。

TIVAの適応

TIVAが絶対適応になる手術はありませんが、
手術の内容や、術中に使用する機材やモニタリングによって
TIVAの方が適しているとされる場面はいくつかあるので紹介していきます。

神経モニタリングを使用する手術

脳や脊椎の手術では、神経のすぐ近くを扱う操作が多く、
術中操作に伴う麻痺の予防のために、
運動誘発電位モニタリング(MEPモニタリング)を使用することがあります。

MEPモニタリングは、
中枢神経を直接刺激して末梢の筋から複合筋活動電位を記録するものですが、
吸入麻酔薬によって電位が低下するため、
MEPモニタリングを使用する手術ではTIVAが選択されます。

似たような神経モニタリングに体性感覚誘発電位(SEP)というもののあり、
大脳皮質感覚野の電位は吸入麻酔薬で低下しますが、
脳幹由来の電位は低下しにくいようで、
SEP使用時には吸入麻酔薬を使用することも多いです。

したがって、これらのモニタリングを使用する手術の時には
導入時のみ筋弛緩薬を投与して、麻酔維持では筋弛緩を使用しないのが原則です。

分離肺換気の手術

分離肺換気の手術において、
吸入麻酔薬でも手術することは十分に可能ですが、
高濃度の吸入麻酔では低酸素性肺血管攣縮(HPV)が抑制されやすいため、
症例によっては術中の酸素化が保てなくなることもあります。

それに比べて、TIVAではHPVは抑制されないため、
酸素化という面では理論上有利になる可能性がありますが、
吸入麻酔と比べて循環抑制が起きやすいため、
そのあたりのメリットとデメリットを天秤にかけて選択するといいと思います。

人工心肺を使用する手術

主に心臓の手術などで人工心肺を使用する場合、
換気を止めて手術が行われるため吸入麻酔薬が投与困難になり、
TIVAが選択されることが多いです。

使用する薬剤

TIVAで全身麻酔をするときの静脈麻酔薬は、
プロポフォールが一般的です。

最近では2020年に日本で製造販売承認となったレミマゾラム(アネレム)も使われることがあります。

プロポフォール

TCI (Target Controlled Infusion:目標濃度制御)

吸入麻酔薬は、呼気中のガス濃度を確認することができますが、
静脈麻酔薬では血中濃度を目で見ることができません。

なので、プロポフォールでTIVAを行う際は、
TCIポンプという便利なシリンジポンプがあり、
患者の年齢、体重、目標血中濃度を設定すると
目標とする血中濃度を維持するために必要な薬剤量を自動で計算して投与してくれます。

☆TCIポンプの使い方☆

①まず準備として、TCIポンプに患者の年齢、体重を入力する

②プロポフォールの投与を3㎍/mLで設定して投与を開始する
※この時、点滴の流速は全開としておきます。

③就眠時濃度(呼びかけに反応がなくなった時点の濃度)を確認しておく
就眠時濃度は、だいたい1~2㎍/mLであることが多いです。

全身麻酔維持中は、就眠時濃度の+1㎍/mL以上として管理する
BIS値を40~60程度で維持できるように調節

⑤手術が終了したら投与終了
※TCIポンプに投与中止してから覚醒するまでの目安の時間が表示されてます

ステップダウン法

TCIポンプがあれば、勝手に計算して投与量を決めてくれますが、
TCIポンプがない時も、「こんな感じですれば概ねいい感じになります」
みたいな投与量があります。

それが『ステップダウン法』です。

☆ステップダウン法のやり方の例☆

①麻酔導入はプロポフォールの静脈注射
成人では2.0~2.5mg/kg (高齢者ではより少量でOK)

②麻酔維持では、10mg/kg/hrで開始し、10分ごとに2mg/kg/hrずつ減量

6mg/kg/hrで維持
BIS値を40~60程度で維持できるように調節

④手術が終了したら投与終了

プロポフォールの半減期は10~20分程度ですが、
就眠時濃度に個人差があるように、
すぐ覚醒する人もいれば、なかなか覚醒しない人もいるので
高齢者などでは投与終了に注意が必要です。

レミマゾラム(アネレム)

今まではTIVAといえばプロポフォールでしたが、
レミマゾラム(アネレム)が2020年に日本で製造販売承認となってからは
アネレムもTIVAの選択肢の一つになりました。

アネレムはベンゾジアゼピン系薬剤で、
プロポフォールとの違いとしてとても大きい点が、
『フルマゼニルで拮抗できる』という点です。

作用が拮抗できることで、
緊急で覚醒させたい時や覚めが悪い時に助かります。

フルマゼニルとアネレムの半減期が約50分とほぼ同様のため、
「鎮静の効果を拮抗したけど病棟に戻ってから再鎮静になり呼吸が止まった」
などのリスクも少なそうです。

☆アネレムの使い方☆

アネレムではTCIポンプが使えないため、
自分で投与量を調節する必要があります。

①麻酔導入は、12mg/kg/hrで投与
ゆっくり単回投与で入れるなら0.2mg/kg(導入の1分量)

②麻酔維持では、1~2mg/kg/hr
※BIS値を参考にしながら調節(ベンゾジアゼピン系薬剤ではBIS値は高く出る傾向)

③手術が終了したら投与終了
平均10~15分程度で開眼が得られるが、個人差あり

④早く覚醒させたい場合は、フルマゼニル投与もあり
初回フルマゼニルは0.2mg緩徐投与、覚醒に応じて0.1mgずつ追加投与(最大1.0mg)

まとめ

以上、今回はTIVAの鎮静薬について勉強していきました。

いずれの薬剤、投与方法においても、
BISなどで麻酔深度をモニタリングしながら投与量を調節していくことが重要だということですね。

なので、普段からBISモニタリングに慣れておくことも大事かもしれません。

そしてもう1つ、TIVAにおいてとっても重要なことが

『点滴をカラにしない』

という点です。

基本的なことなのですが、
TIVAにおいては、点滴がなくなったことに気付かずに放置しておくと
鎮静、鎮痛、筋弛緩のすべてが投与されない状態になります。

こまめに点滴の量を確認するとか、
なくなったときにアラームが鳴るように輸液ポンプを使うとか、
何かしら対策をしていくと安心です。

「なんとなくTIVAってよくわからない」
「吸入麻酔の方が簡単でわかりやすい」
などの気持ちもわかりますが、
TIVAもわかれば楽しいですし、
覚醒と抜管がバチっと決まった時にはとっても気持ちいいです。

私の知っている麻酔科医の中には、
妊娠中なので、吸入麻酔薬を少なからず自分も吸ってしまうのが嫌だからTIVAにする
なんていう人もいました笑

TIVAで麻酔を行う際に投与方法ややり方がわからなくなった時には
この記事を参考にしていただけたらと思います。

これからも、自分の困ったことを記事に残していこうと思いますので、
一緒に勉強していきましょう!

ではでは~

コメント